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『アンサンブルクライスの10年』(2003年4月29日)


最終更新 2007年09月29日
 アンサンブルクライスが10周年だという。私自身にとっても感慨が深い。そもそも、この合唱団の皆さんとのお付き合いが始まったのはバッハ「ロ短調ミサ曲」についての講演を頼まれたのが契機だった。主宰の吉田真康さんの熱心な口説きもあって訪れたのは、確か新宿文化センターの練習室。現在練習中だというバッハの最高傑作の成り立ちや特徴についてお話した後、どの程度歌えるのか興味をそそられ、「一緒に歌ってみましょうか」と言って、楽しくタクトを振らせていただいた。それがきっかけで、上野公園の旧東京音楽学校奏楽堂や、川口リリアホールでの演奏会をご一緒することになったわけだから、思えば不思議な出会いである。
 1999年、川口リリアでの演奏会には、アマチュアの合唱団としてはめずらしく、古楽器のアンサンブルにも出演をお願いし、ブクステフーデの「われらがキリストの四肢」とバッハのカンタータ106番という意欲的なプログラムで臨んだ。聴衆にも喜んでいただけたようだが、なにより楽しかったのは私たち出演者である。ヴィオラ・ダ・ガンバの神戸愉樹美先生と、こういう企画をこれからも続けたいということになり、その結果として2000年に誕生したのが明治学院バッハ・アカデミーである。いまはずいぶん膨れあがってしまったが、それでも合唱の中心には、吉田さんをはじめ、小暮さん、四条さん、室田さん、大谷さんなど、クライスのメンバーが重きをなしている。この3月には「ロ短調ミサ」を上演したわけだが、それは吉田さんとふたりでやってきた3年間の合唱指導の結実にほかならない。吉田さんとクライスに感謝すると同時に、あの新宿文化センターでの出会いの意味を噛みしめざるを得ない。
 ルネサンスやバロックのア・カペラ合唱を主体としたアンサンブルクライスと、古楽器伴奏によるバッハの声楽曲を主体とした明治学院バッハ・アカデミーとは、レパートリーの点で多少のニュアンスの相違はあれ、ヨーロッパの伝統的な合唱音楽に対する熱い想いはひとつである。こんなよい意味の姉妹団体があるというのは素敵なことだ。今後の着実な発展を楽しみに見守ってゆきたい。
明治学院バッハ・アカデミー芸術監督 樋口隆一
(2003年4月29日第9回定期演奏会プログラムより)
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